月光天文台月光天文台

公益財団法人 国際文化交友会 月光天文台

国立天文台・三鷹構内の陽光桜
トップページ > 見聞録 > 陽光桜、初めて花をつける-2017.03.27

※トップ画像は、国立天文台・三鷹キャンパスに植樹された陽光桜の様子

国立天文台・三鷹キャンパスに植樹された陽光桜、初めて花をつける


国立天文台・三鷹キャンパス(東京都三鷹市大沢)へは、月光天文台職員であるU.M.が、ほぼ3ヶ月
に1回のペースで、『アジアの星』プロジェクトの会合に出席する関係で出向いています。

国立天文台に出向く用件は、これ以外にも、宇宙科学研究所/国立天文台が共同開発して打上げ、
運用を続けている『ひので』(Solar-B)衛星の初期観測ワークショップへの参加・聴講など、宇宙
科学や天文の成果を講演で聴講し、確かめるという目的でも訪れています。



『ひので』衛星縮小模型の画像1点を掲げます(2007年6月 JAXA宇宙科学研究本部相模原キャン
パスA棟ロビーにて)。

※2010年4月より、JAXA宇宙科学研究所に改称、組織変更。

『ひので』衛星は2006年9月23日に最後のM-V 固体ロケット7号機で内之浦宇宙空間観測所より
打上げ、以来高精細の太陽観測画像を提供し、太陽物理の謎の解明に多大な成果をもたらしており、
2016年9月10日には打上げ10周年記念講演会が名古屋大学にて開催されました。



『ひので』10周年記念講演会会場となった名古屋大学 東山キャンパス坂田・平田ホールです。

『ひので』は、もともと設計寿命が3年程度の太陽観測衛星で、打上げ時期の関係からもっぱら静穏
期の太陽観測が中心となり、長年の謎であった太陽コロナ加熱問題(光球が4000‐6000℃であるの
に対して、上層大気であるコロナは100万℃以上にも達する現象の謎。何らかの加熱機構がなけれ
ば、相対的に低温な太陽表面から高層大気に熱が移動することはあり得ない)の解決の予想として、
かなり解明に近付くような観測成果を上げています。

多少、『ひので』衛星は一部機能に低下の兆候があるものの、当面は運用が続く模様です。


この衛星の先代に当たるのが、『ようこう』(Solar-A)衛星です。1991年8月30日に鹿児島宇宙空間
観測所(現在は内之浦宇宙空間観測所に改称)より打上げられ、2004年4月末に停波措置を取られ、運
用を終了しました。

『ようこう』衛星は初めてほぼ太陽活動周期1回分に相当する10年間の観測を続け、コロナと太陽フ
レアとの関係、とりわけ太陽フレアと呼ばれる爆発現象がコロナの中で起きていることを突き止めて
おり、太陽研究者の間では「偉大な太陽観測衛星」とみなされています。

そんな太陽観測衛星の偉業を顕彰しよう、と筆者(U.M)は国立天文台に桜の品種の1つである陽光桜の
苗の寄贈を打診、受け入れについての快諾を戴き、2012年11月に『ひので』科学プロジェクト室に
苗を2本届くよう手配し、その苗は国立天文台・三鷹キャンパスのグラウンドに植樹されました。


陽光桜とは、愛媛県出身の高岡 正明氏が太平洋戦争に学校教師として教え子たちを戦地に送り出す際、
生きて帰ってきて桜の木の下でみなで再会しよう、と約束したものの、大半が激戦により命を落とし、
それをずっと悔いていており、平和のシンボルとしてどんな環境でも生育する品種の桜を開発しよう
と決意して、「アマギヨシノ」と「台湾緋桜」を交配させて生まれた寒緋桜の一種です。

また、三島市にある国立遺伝学研究所も、高岡氏に桜の新品種開発において交配させる品種について
の助言をしているそうです。

陽光桜とは、「天地に恵みを与える日の光」という意味があり、太陽観測衛星『ようこう(陽光)』と
愛称の意味は同じです。正確な年度は覚えていませんが、2007年か2008年の3月31日(日付の方は
良く覚えている)の夜7時のニュースの終わり際、高知県の海岸に近い場所に咲いている陽光桜の花を
見たのが、この品種の存在を知る最初のきっかけでした。

この桜の開発者・高岡 正明氏の伝記映画は、2015年11月21日に公開されています。

筆者は、毎年11月は本務が極めて多忙となり、『陽光桜』の映画自体も興行の規模が決して大きな
ものではないため、第1期上映期間中にはどうしても時間が取れず、年が明けた2016年3月27日に
埼玉県深谷市の深谷シネマ(酒蔵だった建物を映画館に改装した)に出向き、ようやく鑑賞することが
できました。

『陽光桜-YOKO THE CHERRY BLOSSOM-』
 (映画の公式サイト-別ウィンドウで開きます)


3年ほどで花をつける、との説明が付いていたのですが、植物ゆえに実際にはなかなかそうはいか
ない部分もありました。

 

左がグラウンド南東側隅に近い位置に植えられた陽光桜の苗、右がコスモス会館前の苗です。2013年
11月16日に撮影したもので、植樹からほぼ1年が経過した時期です。これらの内、南東側の苗は一度
枯れてしまったため、交換してもらった、と後日伺いました。

この日の、三鷹キャンパス内の天気と紅葉(イチョウの木)は実に見事でした。




2016年の春になって、陽光桜の木も徐々に大きくなり、芽のようなものが出てきていよいよか、と
期待しました(2016.03.25)。

 

翌週、時間を作って三鷹に出向くと…(同4月3日)。

 

花ではなく、葉が盛大に出ていました。



若干、肩透かしのような気もしましたが、三鷹キャンパス内のソメイヨシノは満開で、陽光桜も元気
に育っているので、「楽しみは先に延びた」とこの時は受け止めることとしました。


そしてついに、2017年春を迎えて…。

 




某住宅メーカのCFに、「1年楽しみたかったら、種を播きなさい」というのがありました。陽光桜に
関しては、5年間が筆者にとってその楽しみの期間になったと、しみじみと感じています。

陽光桜の開花までは、3年ではなく5年待つことになりましたが、今後は毎年楽しむことができるよう
になったと受け止めています。

関係者のご配慮と、何よりも開発者の故・高岡 正明氏らの高い志とご努力に敬意を表する次第です。


国立天文台・三鷹キャンパス内では、やや遅れてソメイヨシノが咲き始めます。そちらも、私たちの
心を癒してくれることでしょう。





報告者: U.M. (月光天文台)


参考文献: 『陽光桜 非戦の誓いを桜に託した、知られざる偉人の物語』(高橋 玄・著/集英社)
               DVD: 『陽光桜-YOKO THE CHERRY BLOSSOM-』(高橋 玄監督作品)




picup