月光天文台月光天文台

公益財団法人 国際文化交友会 月光天文台

『七人の侍』-山村の全体を描いた地図。
トップページ > 見聞録 > 『七人の侍』-黒澤明監督に敬意を表して(その3)


口野(静岡県・沼津)、珍場(静岡県・伊豆の国-北江間)、堀切(伊豆)、二ノ岡(静岡県・御殿場)

『七人の侍』-黒澤明監督に敬意を表して(その3)(見聞録のタイトルは『七人の侍』-ロケ地を訪ねる
(その3))では、口野(沼津)・珍場・堀切(ここまで伊豆地方)・二ノ岡(御殿場)を取り上げます。

当コラム「その1」でも取り上げている通り、『七人の侍』のロケ地はほぼ日本全国(北は福島県、南は
岐阜県の白川郷まで)のロケハンをしても構想していたような村が見つからず、やむなく静岡県東部と
伊豆地方、さらには神奈川県境の箱根に分割し、さらに最後の戦闘場面を収録するために東京都世田
谷区の成城に東宝のオープンセットが建設され、各シーンを編集で矛盾なくつないで1つの映画にされ
た経緯があります。

「黒澤明『七人の侍』創作ノート」(文藝春秋社・刊)に付属している野上照代氏の解説書によれば、
ロケ地には9ヶ所も地名が掲げられています。ただし、記録間違いもあるようで、今となっては全て
を追うことは不可能に近いのですが、これらのうち、4ヶ所を4点の画像で掲げていくことにします。

なお、本稿のトップ画像(カスタムメイン画像)に掲げたのは、島田勘兵衛(演:志村 喬)が村の守りを
固めるための計画を練るのに、村の各所を検分する際に持ち歩いていた手書きの地図をU.M.が再現
したものです。
当然、映画の小道具(出演者の所持品)ですし、映画の公開から60年が経過していて、現物を入手する
ことは物理的に不可能です。仮に現物が奇跡的に現存していたとしても、映画製作の貴重な資料です
から、関連する博物館に収蔵されているハズです。そのような訳で、スクリーンショットを見て自ら
和紙に墨と筆で描いてみました。それなりに雰囲気が出ていれば良いのですが…。

さて、この項の1番目(記事全体としては2番目)の画像は、沼津市口野をとらえたものです。前掲書の
解説によれば谷間の湿地または山塞とあり、野武士たちが根城にしていた場所に向かう久蔵(演:宮口
精二)や平八(演:千秋 實)、菊千代(演:三船 敏郎)、利吉(演:土屋 嘉男)らが馬で走る場面に使われたの
かも知れません。

見ての通り、沼津市の口野という場所は狩野川河口から江浦湾に接続する内海に面した地域で、映画の
中では海がとらえられた場面は一切出てきませんが、海岸沿いの崖の様子は映画に出てきた4人の男衆
が乗る馬の疾駆する場面のそれと雰囲気が似ています。



次に掲げるのは、伊豆市の堀切という場所です。以前は修善寺町と呼ばれていた場所で、現在で
も土地の人たちには「修善寺」で通ずる場所です(U.M.も、伊豆市や伊豆の国市ではピンと来ず、
「韮山」や「伊豆長岡」、「大仁」などと呼んでいた時期の方が長い為、その方が分かりやすい)。

伊豆市の「堀切」が、『七人の侍』のロケ地としては最南端の場所となります。

この「堀切」という場所は、映画では村の東と南にあたっており、麦や稲を刈り入れる場面や、
後の野武士との戦闘で木の橋を落としたり、儀作(演:高堂 国典)の家族が住む水車小屋の場面に
も登場しています。水車小屋の中で村人たちが儀作と相談する場面はセットでの収録です。



やはり「伊豆長岡」(現:伊豆の国市北江間)の珍場です。竹藪は「その1」で掲げた下丹那のそれ
と良く似ています。前掲の解説資料では村の谷間とされていますが、画像の様に農地も存在して
います。



最後に、御殿場市ニノ岡です。
御殿場市ニノ岡は、村の西側の大がかりな柵を作った場所として映画には描かれていました。
残念ながら、そのような場所を見つけることはできず、該当する箇所の画像を掲げることは
できないのですが、ニノ岡神社はそういうことを抜きに楽しめる、雰囲気の良い場所でした。
上の画像はニノ岡神社の入り口にある広場になっている場所で、時期的に桜が見事でした。

U.M.はこの御殿場にアクセスする際、「その2」でも取り上げている箱根から長尾峠を通過
して到着しています。もちろん、沼津市側からも来ることはできますが、地図で見ると箱根-
長尾峠-御殿場・ニノ岡は南東から北西方向にほぼ一直線であり、車での移動に容易だった
こともロケ地に選ばれた理由の1つであったように感じました。

御殿場市は、黒澤監督の映画のロケ地として『七人の侍』以外でもしばしば使われています。
馬の調達が容易だったこともその要件の1つで、後に黒澤監督は別宅を御殿場市内に構えた
ことからも、この土地を気に入るような環境があったのだと思います。

御殿場市ニノ岡が、『七人の侍』の静岡県/神奈川県内にあったロケ地の最北端で、最も緯度
が高いのは世田谷区成城におかれた東宝のオープンセット、ということになるでしょう。


以上で、舞台となる村の東・南・西側の画像を取り上げてきました。村の裏手の花畑や、野
武士の物見の3名を待ち伏せした榕樹(ようじゅ-ガジュマルの漢名)の森については、この後
「その4」(2014.12.23に公開・掲載)にて取り上げます。



周辺情報…沼津市口野は、狩野川放水路(狩野川河口)が間近です。国道414号線の交差点を左
折してトンネルをくぐると伊豆の国市・伊東市方面へ、直進して県道17号線を進むと「あわ
しまマリンパーク」や「三津シーパラダイス」へと向かいます。
伊豆の国市北江間には北江間横穴群という遺跡があります。伊豆の国市全体としては、幕末に
やって来た黒船が契機となり、国を守るために大砲を作る必要性ができたために整備された
韮山反射炉(国指定史跡)があります(ここで鍛えられた鉄が大砲として加工され、東京湾に設置
された。「お台場」とは砲台の陣地のこと)。源頼朝が若い頃に流刑に処され、北条政子と結婚
して子をもうけたのも伊豆長岡にほど近い蛭ヶ小島です。
一方、伊豆市の「堀切」の近くには「虹の郷」というテーマパークや修善寺温泉があります。
御殿場市では、『時之栖』(ときのすみか)というリゾート地が有名です。


(この項、その4に続きます)


報告者: U.M. (月光天文台)


参考文献: 下記

『七人の侍』創作ノート(黒澤 明・著/野上 照代・解説/文藝春秋・刊)
『もう一度天気待ち』(野上 照代・著/草思社・刊)
『黒澤明と「七人の侍」』(都築 政昭・著/朝日文庫・刊)
『黒澤明 全作品と全生涯』(都築 政昭・著/東京書籍・刊)
『複眼の映像』(橋本 忍・著/文春文庫・刊)
「映画を愛した二人」黒澤明・三船敏郎(阿部 嘉典・著/報知新聞社・刊)
『クロサワさーん! 黒澤明との素晴らしき日々』(土屋 嘉男・著/新潮文庫・刊)

DVD『七人の侍』(黒澤明・監督/東宝株式会社)





picup