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高エネルギー加速器研究機構(KEK)の入り口にて。
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2018年春の科学技術週間-KEKキャンパス公開(1)


日本人研究者が同時に4名(内1名は対象となる論文発表後に米国に帰化したため、メダルは米国に
カウントされた)ノーベル賞を受賞した2008年より丸々10年が経過し、当時の興奮は収まっては
いるものの、リーマン=ブラザース証券破綻をきっかけに世界的な景気後退局面となった時期の、
日本人科学者のノーベル賞受賞は、多くの人たちの心に明るい光を灯すきっかけにもなりました。


ノーベル物理学賞では、以下の3名が受賞されました:

南部 陽一郎博士…自発的対称性の破れの理論に対して。(シカゴ大学名誉教授)
小林 誠博士…  CP対称性の破れの予想に対して。  (KEK名誉教授)*
益川 敏英博士… 同上。               (京都大学名誉教授)**

*2008年当時。KEK特別栄誉教授、名古屋大学特別教授。
**2008年当時。京都産業大学益川塾教授・塾頭、名古屋大学特別教授・素粒子起源研究機構長。


他に、下村 脩博士(ボストン大学名誉教授、ウッズホール海洋生物学研究所特別上席研究員、名古屋
大学特別教授)が2008年に緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見の功績に対してノーベル化学賞を受賞し
ています。

さて、小林・益川理論の予想した、CP対称性の破れについて、理論が予想した素粒子(クォーク)の
対称性の破れとは、鏡のように素粒子と反素粒子が存在し、それらがもしも同数あれば対消滅で全
て消滅し、この世に存在しないはずであるが、ごく僅かに対称性の破れがあるため、物質が存在で
きる、原理的な説明を与える、というものでした。そのためには、少なくともクォークが3世代6種
類あれば良い、と考えたのが益川 敏英博士です。その考えに、数学的な裏付けを与え、また英語が
苦手だった益川博士に替わり、論文を学会で受理されるように英文で執筆したのが小林博士でした。

この理論を提唱した1973年は、まだアップ、ダウン、ストレンジの3種類のクォークしか見つかっ
ていませんでしたが、1995年までに残るチャーム、ボトム、トップの3種類も発見されています。

KEKの果たした役割は、加速器で大量にB中間子を作り出し(Bファクトリー)、その崩壊過程を観測
して、CP対称性の破れを精密に検証、理論の予想が正しいことを裏付けたことでした。

かなり大雑把な表現ではありますが、KEKには素粒子を創り出す装置と粒子加速器、それらを衝突
させて崩壊するときに生ずるエネルギーを観測する巨大顕微鏡、取り出されたデータを記録する大
規模記憶装置で成り立っている、と考えれば、大筋で合っていると思われます。


筆者自身は、職場のある静岡県東部からKEKのある茨城県つくば市へは、それなりの移動距離がある
ことから、2009-2013年までKEK特別公開に出向き、その後暫く訪れないでいましたが、2016年
と2017年の『科学と音楽の饗宴』(つくばノバホール)へは出向いています。

2017年度以降には、Super KEKB/Belle II実験のための建設・改修が始まり、2018年に新たな実験
として電子・陽電子衝突実験が行なわれることとなり、その直前の段階での春の科学技術週間・KEK
キャンパス公開となり、見学に赴いてきました。

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筆者が、KEKつくばキャンパスに到着したのは2018年4月21日14時45分頃、構内の見学には少々厳
しい時間帯でしたが、幸いにして施設見学バス第5便(15:30-16:30)には多少の余裕があるタイミング
でした。9月の施設公開では、KEKキャンパス内のほぼ全てを見学できる一方、春の特別公開は施設公
開の規模が9月のそれには及ばないものの、普段の施設公開では入れない場所の見学もできるため、貴
重な機会ともなっています。

 

この様な、緑豊かなキャンパスとなっています。素粒子物理学への発展の歴史上、欠かせない人物
たちの肖像写真をあしらった垂れ幕も掲げられていました。


今回、自由に行き来できる場所はユーザーズ=オフィス/コミュニケーションプラザで、この中でサイ
エンス=カフェ(ミニ講座と聴講者との議論)や超電導コースター実験などを行なっていました。

物質の性質を確かめる実験の中でも、超電導のデモンストレーションは一般人にも分かりやすい面白さ
があります。リニア=モーターカーの原理で、物質の特異なふるまいを見ることができるのが超電導物
質の実験です。

 

浮遊する物質は、事前に液体窒素で冷却してあります。それを、永久磁石のレール上に置くと、常温
に戻るまでは浮き上がり続けられます。

この種の実験では、液体窒素だけでなく、冷媒で冷却した物体も絶対に触ってはいけない、と注意さ
れます。必ず、防護措置を採りましょう。



加速器の運転状況を示すモニタです。左側は加速器の運転の最新状況、右側はカレンダーを表示して
います。恐らく、KEKの研究者が見られる情報を、ここの大型モニタに映し出しているのでしょう。


KEKB円形加速器は、周長3.016kmに及ぶ、最大級の加速器です。今回は、その円周に沿った通路を
歩く公開形態ではないため、見学場所2ヶ所への移動はバスのみですが、9月の特別公開時には加速器
沿いの通路を歩けるだけでなく、その区間内であれば移動見学用のバスも、手を上げれば止まり、乗
って次の目的地にも移動できます。KEKの構内は実験施設の性質からもかなり広く、職員も自転車で
移動するため、残暑の厳しい9月上旬の特別公開には、バスでの移動が体力的な負担も少ないかと思わ
れます。

KEKB加速器の周長が3.016kmということは、単純計算で直径960mにも及ぶことになります。移動
時間を考えても、やはりバスが使える時にはそれを利用した方が良さそうです。


15:30の見学用バスが来たので、分乗してそれぞれの見学場所へと向かいます。Belle II検出器(Bファ
クトリー筑波実験棟)⇔フォトン=ファクトリー(PF)へとそれぞれ向かい、時間差で2つの施設を見学
するので、内容は同じです。筆者は、Belle II検出器→フォトン=ファクトリーの順序で見学しました。



Belle II検出器棟に到着、施設についての解説を受け、それから地階の検出器が見える場所まで下りて
行きました。

 

左が、筑波実験棟の入り口から少し入った、Belle II検出器へのアクセス通路、右がモニタに示された
Super KEKB全景の航空写真です。南北(画像では左右に対応)が2km、東西(画像では上下に対応)が
1kmという広大な敷地で、元は山林または農地だった土地を素粒子実験施設に転用していきました。
この画像を見ると、KEKの構内が山林だった時の名残が見えています。



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報告者: U.M. (月光天文台)






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