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神奈川県茅ヶ崎市の海岸で見た夕方の南西(相模湾沖伊豆方向)の様子。
トップページ > 見聞録 > 『天国と地獄』-黒澤明監督に敬意を表して(その5-1)

*トップ画像は、神奈川県茅ヶ崎市の海岸より見た、相模湾南西沖方向の海(伊豆半島の方角を臨む)の
様子。撮影日は2016年1月1日。


汐見台海岸-藤沢市(辻堂)・茅ヶ崎市境付近の海岸からの光景/烏帽子岩と伊豆半島が
                            同一視線上に見える場所


「その4」で取り上げた、捜査会議の続きの場面は、子供が言っていた「富士山と海」の見える場所で、
犯人のアジト(進一少年の監禁場所)を示唆する重要な証言に出てくる場所です。戸倉警部は「あれから
何か割れたか?」と促し、小池刑事(演:鈴木 智)が立ち上がって報告します。

小池刑事は、一緒に立ち上がったペアを組んでいる刑事から手渡されたものを手に、「あの子に絵を描
いてもらったんですが」と会議室の正面に歩いていき、横浜市西区の地図の脇の黒板に進一少年が描い
た絵を画鋲で貼り付けます。



(進一少年が描いた絵-筆者(U.M.)が再現したクレヨン画)

会議室に詰めていた捜査員たち、小池刑事が黒板に貼り付けた絵を確かめようと立ち上がります。

誘拐犯が権藤邸に掛け、進一少年の声を聴かせてきた電話は直通電話であることが報告されます。横浜に
直通電話が掛かる範囲(交換施設で交換手に依頼する必要のない電話)で、なおかつ海と富士山が見える範
囲は、逗子・藤沢・茅ヶ崎・鎌倉の一部などの海岸地帯しかありません。上のクレヨン画に描かれている
のは、恐らく夕日であり、ここに挙げた範囲の海岸地帯であればどこからでもこの様に見られます。つま
り、進一少年の監禁場所も、この範囲内であることが確実視されます。


小池刑事とコンビを組んだもう一人の刑事が、このクレヨン画を手に海岸を歩いて、夕日が沈む様子を確か
めている場面がカットバックで挿入されます。以下、その様子を現地で確かめてみた時の画像を掲げます。


 sa-IMGP8071

まず、富士山が映し出されます。富士山の山体を背景に、進一少年のクレヨン画を持った2人の刑事が、
クレヨン画に描かれた様子と、実際に見える、夕日が沖合に沈んでいく様子とを見比べています。

視線が左方向、海岸から離れて…。

 sa-IMGP8089

伊豆半島の湯河原-熱海沖が、その前景には波打ち際に打ち寄せる波が映し出されます。視線は更に左
へと移動していきます。

 sa-IMGP8119

烏帽子岩が画面に入ります。実際には、伊豆半島の山間への日没と、烏帽子岩とが同一画面に入って
いたので、カメラはもう少し(筆者が訪れた茅ヶ崎の藤沢市境に近い汐見台よりも)東より、収録時期
はもう少し早い時期(冬至に近い時期)であったことはほぼ間違いないでしょう。少なくとも、茅ヶ崎
よりでないことは確かです。烏帽子岩と伊豆半島が同一視線上に見える範囲は、藤沢の海岸地帯に限
定されるからです。鎌倉に入ると、今度は江の島が烏帽子岩を隠してしまいます。

s-IMGP8091

若干見づらいですが、烏帽子岩と日没が同じ画面内に入るように撮影した画像を掲げておきます。



※2016.11.18追記…画像の一部追加と差し替え(2016.10.15撮影)を行ないました。撮影場所は
追加または差し替え分(2016.10.15撮影)については片瀬江の島海岸で、藤沢市内です。


以上の報告を受けて、戸倉警部は「よし」と小池刑事に声を掛け、小池刑事は一礼して報告を完了、
席に戻ります。


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※2016.07.01追記…この富士山と海と夕日のクレヨン画(劇中のオリジナル)は、製作にかなり難航
したとのこと。

まず、東宝の近所の小学校1年生数人に頼んで描いてもらって不採用。2-3年生のクラスにも描いて
もらったがこれもダメ。

次に中学生数人を選んで、バスで江の島までスケッチ旅行して描いてもらったが、逆にリアルすぎで
不採用。最後に、成城の絵の好きな少年の中から黒澤監督が一人選び、その子に書いてもらってよう
やくOKが出たとのことです(『黒澤 明と『天国と地獄』 ドキュメント・憤怒のサスペンス』(都築 政
昭・著/朝日ソノラマ・刊 P.209に掲載))。

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川崎市内の工業地帯(エーテル入手先の聴き込み)

「次はエーテル」と戸倉警部が促し、2人組の刑事が立ち上がって報告を始めます。高橋刑事(演:
牧野 義介)は吸っていた煙草を揉み消し、もう一人の刑事(演:鈴木 治夫)がまず口火を切ります。


刑事:エーテルの線で追うのは、なかなか困難です。これは、普通の薬局には置いてありません。病
院や大きな開業医が、直接問屋から買い入れています。
高橋刑事:しかし、工業用エーテル、溶接などに使うものを代用する手があります。こう考えますと、
エーテルを使ったからと言って、犯人を医者、薬剤師、医学生などに絞って考えるのは危険ですし、
また、工業用エーテルの線を追うとなると、大は造船、車両、自動車工業から、小は個人の鉄工所、
修理工場まで洗わなきゃならん、ということになります。以上。


カットバックに挿入されたのは、川崎市内の工業地帯、合計6本の煙突のうち1本からもうもうと煙
が上がる様子を背景に2人の刑事が汗を拭いつつ周囲の様子を窺う場面です。



(次ページに続く)



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(参考文献は全て最終ページに)








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