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創立者のことば

『天文は宇宙大自然を人類に教える大教育である』

◆ 暦と時間 


 見事な宇宙の構成は一つの核を中心として陰力(引力)によって活動している。時間と暦はこの秩序整然たる天体の活動から割り出されて作られたものである。時刻は、地球自転 (注1) から生まれ、暦は太陽を中心として約365日の周期で公転する地球の運行から、また地球を中心に約27日で自転・公転する月 (注2) の運行から作られた。“天上の儀を地上に写す”この理に基づいて作られ、我々が日常用いているのである。

 この暦の起源をきわめると、古代民族が太陽・月・星等の天体の動きから見出し、年月日を組み合わせて日時や季節を知ることの必要に迫られて作りだしたものである。地球が太陽の周りを一公転する期間が1ヶ年、月が地球の周りを一公転する期間がほぼ1ヶ月であり、地球の自転はほぼ1日となっている。年月日は天体の運行状態を示すと共に、過去・現在・未来も年月日で明らかとなる。夜明けの空に日が昇れば明るくなり、暗夜に月が昇れば明るくなる。日と月が結ばれて明らかという文字に示される如く、日と月によって作られた暦によって、人間界の生活は明らかになる。この故に、人間の生活に一日としてなくてはならない暦である。

 暦の数は多く、太陽暦・太陰暦・太陰太陽暦・恒星暦・天文暦・航海暦等、多種多様にあるが、最初に作られた暦は月の満ち欠けを基にした。月の満ち欠けは、天体現象の中でも一番目につき易く、古代人は月を見て生活の基準としたのが太陰暦で、最も原始的な暦である。今日、世界でこの暦を用いているのは、回教徒のみで、時の流れと共に人類文化は次第に進み、太陰暦より、太陽の運行による季節の変化に合わせていく太陽暦が使われるようになった。

 今日の人は暦に関心を持つものは真に少ない。然し、われ等の日常会話中に、大昔に何々が出来たといっても、何年前といっても、月日(ツキヒ)を基準にしていう。古きを読むから古読(コヨミ)といわれる。その暦は日常生活における人の生活を明らかにする。「何時生まれたか」と問えば「何年何月何日」と月日を並べれば、生まれた日が明らかとなる。暦は萬物を生むとさえ言えるのである。暦と時間は人類生活に重要であって切り離せない。もし切り離せば物事総て暗闇となり、生活は不順となり循環順律がなくなる。月日を簡単に思うことは真に浅はかである。月日の謂れをよく心得たならば、これほど大切なものはない。天文である太陽・太陰・恒星で暦を作り、月日と時間を定めて日常の生活の支配をされている。暦は宇宙循環順律の法則を知らしめて萬物に生活をさせる大切な御役である。若し暦が定まらなければ人の思想は闇となり、約束は反古となる。暦を作る天文をおとぎ話のようにお話し申し上げるならば、暦は、天文学で月日と星に相談して作られていると言っても間違いではない。

 時間について述べるなら、日本の時間の標準は兵庫県明石(東経135度)で、平均太陽(一年間、等速運動する仮定の太陽)が明石の子午線通過時を日本の正午と定める。其所で決めた時間を“日本標準時”として、日本全土で使用している。このため明石以外の土地ではラジオの時報が正午をつげても実際の太陽は南中していない。例えば九州の長崎では明石より太陽の南中が約30分遅く、反対に北海道の釧路では30分早い。時間の標準位置は国々によって総て異なり、その国の便宜上経度15度の間隔で区切って標準時を定めている。(イギリスのグリニッジを基準とする世界標準時が定められているが、日本国民の生活上では使用されていない)日本で夜が明ける時は、ある国では日中であるとか、国々によって時間が違うため、日本から東に行けば時計の針を進め、西の国に行った場合は遅らせなくては、その国の時間として通用しない。今の世界はその国で都合上決めた人間時間であり、一定した時間がないことは大きな問題である。

 宇宙時間を定めて世界人類一律に時間を一定にすれば、人類は精神的に安定し、思想的にも実に清浄となる。時間が確定すれば不安の念を抹消する。今の時間は1分を60秒として、1時間を60分とした。昼の時間を12時間、夜の時間を12時間、同じ12時間であるから文通するにも、午前・午後と書かなければならず、区切りがつかない。時間と暦と切り離せない。暦が時間であり、時間が暦である。1日を24時間と定め、1ヶ月を30日と定め、1年を12ヶ月と定めている。これも時間より生まれたものである。宇宙時間と国の時間を定めれば、思想も統一される。物事を考えてみれば、時間・日・月・年も太陽・太陰を基準としたので、天体が基準となる。歴史も過去・現在・未来に於いても時が支配する。

 今後は精神的の進歩の力により時期あって更生をし、最善を尽くし学問の線を越えて精神的に基づけば、正しい宇宙時間と暦が定められる。これによって精神的にも体的にも迷うことなく、世界的に共通を図る時期が来ることを確信する。われ語らずとも精神的に通じ、一律平等に時の大切なことが判り得るのである。自然に人類利益となる。時・日・月の暦が授けられ、世界一律の時が定まれば、天文より暦が現れるのである。



 以上は中野與之助氏が記述した文章 (1966年2月) よりの引用です。現時点では科学的に記述が曖昧なところもあるかもしれませんが、氏の意図するところをお読み取りくださればと思います。当天文台では毎年「太陽・月・星のこよみ」を発行し、身近に宇宙を体感できるカレンダーとして天文の啓蒙普及に努力しております。

(注1) 1日は正確には太陽が南中して次に南中するまでの時間で、恒星に対する地球の自転周期は約23時間56分です。
(注2) 正確には1朔望月(地球から見た月の形変化の周期)は約29.5日、月の地球を周る公転周期は27.3日です。
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