- 2004 - 1月 -


☆TAMA300    「宇宙をさぐる新しい目・重力波」
             2002年第16回「大学と科学」公開シンポジウム講演収録集より  

 国立天文台三鷹キャンパスには、「TAMA300」と呼ばれる重力波観測装置があるという。それは一体何なのか。

 重力波とは

 あまり聞きなれない重力波を理解するために、電磁波と比べてみましょう。
 光や電波などの電磁波が電磁力の波であるのに対し、重力波は重力の波です。電磁波が真空中を光速で進むように、重力波も真空中を光速度で進み、波の進行方向に対し垂直な面内で作用をする横波の性質を持っています。

 電磁波が、ある電荷をもった物質が加速度運動をしたときに発生するのと同じように、重力波はある質量をもったものが加速度運動をすると発生します。

 電磁波はマックスウェルが「マックスゥエルの方程式」という電磁気についての理論から、その存在を予言しました。その15年後、ヘルツが火花放電を使って、その存在を検証しました。電磁波が検証されてから100年以上たっています。1950年ころ以降、電磁波は私たちの生活にも深く関わっています。
 一方重力波は、アインシュタインによって「一般相対性理論」から1916年にその存在が予言されました。1978年にはテイラーとハルスによって重力波の存在が間接的に証明・検証されました。2人はこの業績により1993年度のノーベル物理学賞を受賞しています。

 重力波と電磁波の違い

 重力波と電磁波はその作用の大きさがまるで違います。電磁気力は重力に比べると桁違いに強い力です。原子レベルで陽子と電子に働く電気的なクローン力と万有引力(重力)とを比較すると、約40桁も違います。

 次に大きな違いは、電磁力にはプラスとマイナスがありますが、重力には物質をひきつける引力しかないということです。その結果大きなスケールで見ると電磁力はお互いが打ち消しあって中和するのに対し、重力は宇宙という巨大な物質の場では、星の進化などを演出する大きな力となります。

 重力波の大きな特徴は、透過力が大きいことです。地球をらくらくすり抜けるニュートリノと比べても、桁違いの透過力を持っています。そのため一度発生した重力波は、ほとんど何物にも吸収されることなく宇宙の中を飛び交うことになります。重力波では、ほかの観測手段では決して見ることのできない宇宙の深部をさぐることができるようになると考えられます。

 レーザー干渉計による重力波の観測

 重力波は空間のゆがみとして伝わってきます。それで直角方向にレーザービームを放射し、反射してくるビームを干渉させて空間のゆがみによる距離の変化を観測します。なんでも太陽と地球間の距離に対し、原子核1個分の変化を検出する精度ともいわれます。反射するまでの距離を「基線」といい、基線が長いほど観測は有利になります。
 東京三鷹のTAMA300は基線長300mです。

 世界的に見ると、レーザー干渉計による重力波の観測装置はいくつか稼動・計画されています。アメリカではLIGO計画としてワシントン州に4kmと2km、ルイジアナ州に4kmの基線を持つ大型レーザー干渉計を建設中です。フランスとイタリア共同のVIRGO計画ではイタリアのピサ近郊に基線長3kmの干渉計を建設中です。ドイツとイギリスはGEO計画として600mの基線長を予定しています。

 TAMA300

 日本のTAMA300は、1999年夏に世界に先駆けて運転を開始した中型の重力波検出装置です。これは将来の大型干渉計のための基礎技術を開発・実証する意味もあり、小型化される部分以外は光学、制御、防振、真空とも大型干渉計に匹敵する性能を持つよう設計されています。
 もし観測中に銀河系の内部や周辺で重力波が発生すると、世界で初めて重力波が検出されるかもしれません。

 TAMA300は現在のところ、世界最高感度と世界最高観測時間の記録をもつ、世界でもっとも進んだ検出器だそうです。

 重力波で何が見えるか

 重力波が大量に発生するのは、強い重力が激しく変動する時です。たとえば連星パルサーが衝突・合体する時、超新星の爆発、ブラックホールや中性子星どうしの衝突・合体などです。さらに宇宙初期の相転移の産物であるバブルや宇宙ひもなどの衝突や激しい振動など、宇宙の中でも非日常的な激しい現象が考えられます。

 そういった珍しい現象が起きると観測できるだろうということです。TAMA300という名前は、「(重力波が)たまたまみつかる」という意味だそうです。

 もし重力波が観測されれば、連星の合体や超新星爆発、プラックホール、宇宙の始まりを直接見ていることになります。ただ1台の観測装置では、重力波源の位置を特定することはできません。またローカルな雑音と区別するためにも複数の観測装置が協力することが重要となります。

 宇宙を見る新しい目

 電磁波が予言されたとき、それが私たちの生活にどのように影響するかを予想できた人はいなかったでしょう。重力波はまだ観測されていませんが、21世紀の終わりごろにそれがどのような姿になっているかを想像すると(たとえば深い洞窟の中どうしの通信が可能になるなど?)、何かワクワクさせられます。


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