○子供のための天文相談室
解答者・トラ
天文・宇宙分野を担当
(月光天文台の近くに住んでいる宇宙猫)解答者・ハヤト
気象・地学分野担当
(暑さに弱いが穴掘り名人、いや穴掘り名犬)
トラ(以下 T):ニャー
ハヤト(以下 H):ワンワン。・・・。
今、人間の言葉に直す自動翻訳機をつけました。良い子の皆さん、聞こえますか。初めまして、今日から皆さんの質問にお答えします。よろしくワン。
T:トラだニャー。「ハヤトラキッズ」というのは、ハヤトとトラが答える「子供(キッズ)のための天文相談室」のことだニャー。ちょっとわかりにくいかニャー。
H:大丈夫ワンワン。それでは早速今回の質問を見てみましょう。
質問・「中秋の名月」というのは何のことですか?

T:ハイ、これは簡単ですニャー。旧暦の8月15日の十五夜お月さんのことです。
H:旧暦というのは、月の満ち欠けに合わせたカレンダーですね。ワン。
T:そうです。今のカレンダーと比べると、およそ一月前後遅れます。今年(2000年)は9月12日が中秋の名月になります。秋の季節の真ん中の頃ですね。
H:中秋の名月には、どのようなことをするのでしょう?
T:お月様にお団子や、あるいは里芋などの秋の実りをお供えし、ススキなど秋の野花を飾り、感謝の気持ちを表わします。
H:「お月見」だワン
T:また稲の穂が出る初穂祭のころでもあり、そうしたいろいろな恵をもたらす自然をたたえるお祭りだニャー。
H:この日は満月ですかワン?
T:新月から満月までの平均の長さは約14.8日。でも旧暦の十五夜は、新月から実質14日ほどの場合もあります。ですから「名月」の翌日、翌々日に満月になることも珍しくありませんニャー。
H:ということで、中秋の名月について、みんなよくわかったかな。ではまただなワン。
T:またニャー。
質問:2000年のこの夏、伊豆諸島の三宅島や新島、神津島などで地震があいつぎ、三宅島の雄山では8月18日、最大規模の噴火が起きました。いったいその付近では何が起きているのでしょう?
トラ(以下T):三宅島はとうとう9月の初め、全島避難となりましたニャン。
ハヤト(以下H):自然の力に人間は逆らえませんね。お気の毒ですが、がんばっていただきたいです。
T:振返ってみると11年前の1989年の夏頃、伊東に群発地震があり、7月13日ついに伊東沖に海底噴火があって「手石海丘」ができました。その3年前の1986年11月には伊豆大島の山腹で割れ目噴火が起き、全島民が島外へ避難する事態になったニャー。

H:そうだなワン。伊豆半島の付近は日本列島の中でも、4つのプレートがせめぎあっている特殊な地域なんだ。
T:4つのプレートというのは?
H:現在の地学では、地球の表面(地殻)はいくつかのプレート(板)状になって、その下のマントルに乗っかっていると考えられているんだワン。西日本は「ユーラシアプレート」、東日本は「北米プレート」、そして伊豆半島とその南に伸びる伊豆諸島、小笠原諸島などは「フィリピン海プレート」に属している。これらのプレートの東にはさらに「太平洋プレート」があって、それが西へ西へと動いているんだワン。
T:すると日本列島というのは、おおざっぱに言うと大陸のユーラシアプレートと太平洋プレートに押されてできた「シワ」みたいなもんだニャー。
H:そうだワン。
T:伊豆半島というのは昔赤道付近にあったのが、動いてきて日本列島に衝突したってきいたことがあるニャー。
H:そう。伊豆半島は2000万年前頃は、日本列島の南1500kmあたりの海底火山列だったんだ。
T:ニャント海の底!。
H:それが、話をかんたんにすると、その海底火山が、フィリピン海プレートと共に北上し、日本列島に衝突したのが100万年前あたりだな。実は海底火山は、そのとき初めて海中から陸になり、今度は陸上での火山活動が始まるんだワン。そのころの火山が天城山や達磨山なのさ。
T:見てきたような話だニャーカ。
H:でも伊豆半島の前にも日本列島との衝突は起きていて、それが丹沢山地や御坂山地ともいわれるなワンワン。
T:伊豆諸島の火山ができたのは?
H:プレートとプレートがぶつかると、比較的重いほうが下に沈み込むんだな。フィリピン海プレートに太平洋プレートが沈みこんでできた火山が伊豆諸島や箱根、富士山などだな。伊豆七島ができたのは、伊豆半島の衝突の後で、数十万年前というレベルの話だワン。今の伊豆大島ができたのは4万年前。
T:富士山はどうだニャー。
H:富士山が噴火を開始したのは10万年前で非常に若い。けどもその噴出量が「異常に」多いというのが謎だな。
T:ニャー
H:フィリピン海プレートは、今でも北から北北西に向かって毎年4cmずつ動いているんだ。それがユーラシアプレートとぶつかって沈み込んでいるのが「駿河トラフ」、「南海トラフ」、そして「南西諸島海溝」だな。この海溝(カイコウ)というのは海の底の細長い溝のような凹地形で、深さが6000m以下のものはトラフ(谷)というんだなワン。
T:その近くで地震や火山活動が起きるんだニャー。
H:フィリピン海プレートが北米プレートの下にもぐり込んでいるのが、相模湾にある「相模トラフ」だ。北米プレートに、東の太平洋プレートがもぐり込んでいるところが「日本海溝」で、深いところでは8000mもある。また太平洋プレートがフィリピン海プレートに沈み込んでいるところが「伊豆・小笠原海溝」だな。こちらは最深1万m近いぞ。
T:プレートが動く限り地震も火山も起きてあたり前ということかニャー。
H:大雑把にはそうだ。フィリピン海プレートは伊豆半島以外のところでは、わりとすんなりと日本列島の下にもぐり込んでいる。さっきも言った南海トラフ、駿河トラフ、相模トラフだが、その沈み込みに伴って地下の岩石が割れ、プレート境界型といわれる大地震を起こす。
T:どんな地震だニャー。
H:南海地震、東海地震、関東地震、小田原地震なんかだワン。
T:スゴイ地震ばっかだ。
H:ところが伊豆半島や伊豆諸島の北部は火山活動で暖まって軽くなり、本州の下にもぐり込めない。伊豆半島が日本列島と衝突することになったのもこのためだな。またプレート境界型の大地震は起こさない代わりに、日本列島を押す力が強くなり、丹沢や富士川沿いの地層を激しく褶曲させたり赤石山脈を大きく隆起させたりしているんだな。
T:話がいくらでも大きくなるニャー。
H:ワンワン。というわけで伊豆半島付近は、あちこちひずみがたまりやすい場所だというのが、今回の噴火や地震を考える大前提だな。
T:三宅島に話をもどすニャン。
H:ワンワン。三宅島は、およそ20年ごとに活動期に入り、その前に地震が起きることが知られている。今回の活動により、地震と地殻変動の間にはっきりとした関係があることがわかった。微小地震が多発して山頂が急激に膨張(山頂が上昇)し、この時期に噴火や陥没が起きる。その後ゆっくりと収縮(山頂が下降)する。この繰り返しにより、グラフにすると鋸の刃のような形になる。
T:パターンが見えてきた?
H:三宅島中央の雄山(オヤマ)は、現在山頂が陥没している。雄山の内部は、空洞に地下水が入り、マグマの熱で水蒸気になった、いわば高圧釜のような状態だったと考えられる。8月18日の噴火などは、この高圧釜が破れた水蒸気爆発とみられるワン。
T:三宅島のマグマはどこに行ったのかニャー。
H:三宅島の近くで海底噴火を起こしたマグマ本体が、北西に動いて神津島、新島、式根島周辺の地殻を刺激して地震を起こし、ひずみを解消している、と考えられるワン。
T:しかし30kmも離れた火山が、地下でマグマがつながっているとは常識では考えられんニャー。
H:群発地震にM(マグニチュード)6クラスの大地震がいくつも交じるのは、世界的に見ても珍しい現象だなワン。群発地震はマグマが固まった「岩脈」が入る現象、つまり「貫入イベント」によるものとみなされる。この貫入イベントの先端部では、大きな地震が発生することがある。
T:群発地震は貫入イベント?
H:地殻変動で見ると、三宅島と式根島の間に岩脈が入り、その間の距離は圧縮力でむしろ収縮している。一方新島、神津島は岩脈とは直角方向の張力を受け、それぞれ北東と南西に動いてるワンワン。
T:頭痛くなってきたニャー。
H:伊豆諸島海域の地震についていえば、M6クラスの地震の活動期は、8年前後の周期でやってくるんだな。いわば伊豆諸島海域は、現在進行中の最も新しい変形帯なんだワン。
T:新しいよニャー、この間だもの。
H:新島・神津島の南西には銭州海嶺(ゼニスカイレイ)という海底山脈が横たわっている。伊豆諸島海域のプレートの進行は、伊豆半島によって北側で妨げられ、銭州海嶺によって西側で止められるんだ。今回の地震は基本的には北西進するプレートと、それを押し返そうとする銭州海嶺の抵抗力によるもので、今のところ活動の中心は銭州海嶺の東側だ。
T:ということは?
H:銭州海域の西と予想される東海地震などとのかかわりは少なそうだということ。
三宅島から北西に向かったマグマは、北東―南西方向の張力の助けを借りて岩盤を押し開き、群発地震を起こしつつ神津島へたどり着いた。そこでM6クラスの地震を3個も起こした。張力による割れ目へのマグマの貫入と地震による断層のずれで、新島と神津島の距離は60cm以上も拡大した。
これが今回の地震・噴火活動の大まかなシナリオだなワン。
T:よく調べたニャー
H:ワンワンワン
T:ハヤトじゃなく地学の先生方のことだニャー!

ハヤト:皆からの質問待ってるよワン。
ト ラ:身近な不思議や疑問があったらメ−ルを送ってね。ニャー。