◆「元素のスゴい話」を読んだ!
周期表でスラスラわかる!
「元素」のスゴい話アブない話
小谷太郎著/2011年8月発行/青春文庫・695円/青春出版社
めっぽう面白いというのはこの本のことをいうのでしょう。目からうろこのような事実を、すんなりと伝えてくれる。たとえば放射能の人体への影響は次のようだといいます。
「放射線が人体を通過すると、通り道にある分子をぶっこわします。電子をはじき飛ばされ原子核はちがう核種に変わり、分子結合はでたらめにつなぎかえられます。
読者が地下数kmにいるのでもない限り、この瞬間も自然の放射線を浴びています。そのほとんどはミューオンという粒子で、上空から毎秒1個/cm^2くらいの率で降ってきて、体内の分子をこわしますが、その程度の被曝では健康にさわりはありません。放射線による分子の傷は体が治します。
DNAが損傷を受けたとき、DNA修復酵素が働きます。DNAは2重ラセンになっていて、対となるラセンの対応する箇所を読めば、こわれた部分の遺伝情報を補完できます。自然は遺伝情報のバックアップをとっているのです。」
では強い放射線を浴びた場合はどうなるのでしょう。やはり引用してみます。
「放射線が強いとバックアップも同時にこわれる確率が高まります。染色体は2本ずつ対になっているので、二重ラセンが両方ともこわれた場合は、DNA修復酵素が相同染色体から遺伝情報を読んでくるそうです。しかし放射線が強烈なら、すべてのバックアップが失われて遺伝情報が修復不能になることもあり得ます。
DNAが回復不能なまでにこわれると、やがてその細胞は死にますが、その前にまず細胞分裂ができなくなります。したがって強烈な放射線を浴びると、細胞分裂にともなう機能に最初のダメージが現れます。第一に傷がふさがりません。被曝にともなって火傷を負ったり、その後に怪我をしてできた傷がなかなか治らず、患者を苦しめます。」
福島原発の事故で、みんな放射能に強い不安を感じています。放射能によって、まず痛手を受けるのは細胞分裂とのことです。では人体の中で、細胞分裂を行っているのはどのような箇所でしょう。
「血液中の赤血球などの血球は、細胞分裂で生産される特殊な細胞ですが、これが作れなくなり、白血病になります。食べ物の処理で酷使される腸の上皮細胞は消耗が激しく、絶えず補充されていますが、補充が止まると脱水・下痢などが現れます。
精子もまた細胞分裂で生産される特殊な細胞で、男性の生殖機能は放射線によって停止します。
女性の卵母細胞は細胞分裂しません。しかし卵母細胞が放射線に強くても、それの成長した姿である胎児や新生児はさかんに細胞分裂しているため、放射線に敏感です。医療でX線撮影をするとき、女性は妊娠していないか確認をとられるのはこのためです。」
これだけではありません。
「弱い放射線なら急性症状は現れませんが、それでも体内のあちこちの細胞でDNAが修復不能なほど損傷しているかもしれません。そういう細胞がひっそり死んでくれれば大した害はないのですが、時にはガン化することがあります。
被曝後何年もたってから発症するガン。被曝にあった人はこの不安をかかえて暮らさなければならず、また多くの場合には発病しても原因の特定が困難です。人々が放射能に感じる不安の大きな要因でしょう。」
えんえんと引用しましたが、ずばり知っておくべきことが指摘されています。この本はお値打ちですよ、という所以です。
もうひとつヨウ素(原子記号「I」)について、同書からの情報を紹介します。
天然のヨウ素は100%同位体〔127〕Iで、放射能のない安定な物質です。しかしウラン等が核分裂してできるヨウ素のひとつ・同位体〔131〕Iは、放射能を持ち、寿命11.58日で崩壊してベータ線を放射してキセノン〔131〕Xeに変わり、同時に放射線を出します。
海苔や昆布などの海藻は、なぜかその体にヨウ素を集める性質があり、それらを食べればヨウ素を摂取することができます。ヨウ素はハロゲン族で化学的反応性が高い物質で、体内に入ると甲状腺に蓄えられます。人間の成長ホルモンはヨウ素を含む化合物で、ヨウ素は体内で重要な役割を果たします。
放射性物質が飛散したときヨウ素剤を摂取するのは、放射能のない天然のヨウ素を先に体内に取り込んでおいて、放射能を持つヨウ素〔131〕Iを、人間の体ができるだけ取り込まないようにするためです。
今日(10月10日)の静岡新聞によると、福島県の18歳以下の子ども全員を対象にして、甲状腺の検査を始めたそうです。約36万人を生涯にわたってチェックする、世界に例のない規模の調査となるそうです。
この検査の意味を正しく理解するには、上記のようなことを知っておく必要があると思われますが、寡聞にして新聞等で読んだ記憶はありません。またNHKテレビで見た番組では、原発事故の後、学者がいち早く被爆地でのヨウ素剤の摂取を提言したそうですが、それが報道されたのは、はるか後のことだそうです(事実上報道されなかった)。それは、ヨウ素剤の備蓄がなく、そのような政府発表がさらなる混乱を招くと考えられたためではないでしょうか。
もしそれが事実なら、原発の周辺地域ではヨウ素剤の備蓄を進めるべきではないかと思われますが、そのような話も聞いた覚えがありません。
※追記:11月2日:今日の静岡新聞によると、次のとおり。
【原子力安全委員会は1日、原子力事故の防災対策を実施する地域を、現在の原発から半径8〜10キロ圏から、半径約30キロに拡大することで合意した。また甲状腺被ばくを避けるため、住民の屋内退避や安定ヨウ素剤の服用を考慮する「放射性ヨウ素防護地域(PPA)」を新たに設け、原発から半径50キロを目安とした。】
PPAではヨウ素剤の備蓄が必要になるそうです。話がそれましたが、元素についてのスゴい、アブない話がいろいろと載っています。
知っていないと損をするかも。ご一読をお勧めします。
<セツ>